移住先の候補はあるけれど、最後の決め手になるのはどんなことだろう。
こんな疑問や悩みを抱えている移住希望者の方も多いことでしょう。
なかには、初めて現地を訪れた瞬間のインスピレーションを信じて移住を決め、幸せな移住生活を送っておられる方もいらっしゃいます。
一方で、移住ブームに乗って、旅行先を決める感覚で移住先を決めたことで、結局後悔される方もいるようです。
誰でも「こんなはずではなかった」という結末を迎えるのは避けたいことですよね。
前回記事で「今週末、いわきに行こう!頭で考えていても何も進まないから…」といわき行きを決めた私たち。
移住を決断してから初めてのいわき訪問。現地でどんな情報が得られたのかを知っていただけば、きっとあなたの移住計画の参考になりますよ!
常磐道を北上する
2024年5月12日の早朝、私たちはいわき市への移住を本格的に検討するため、車を走らせていました。
「いわきに行こう」と決めた瞬間から、胸の高鳴りとともに、心の重みが少しずつ解けていくように感じました。
常磐道を北上して利根川の橋を越えると徐々に都会の風景が遠ざかり、視界が一気に広がります。
平野部を抜け、茨城県の北部に差しかかると、トンネルがいくつも続く区間に入ります。
風景が変わるごとに、心の中のモヤモヤも徐々に晴れていくように感じました。
車内では、妻と「いわきでどんな家を探そうか」「どんな生活が待っているのだろうか」と話しながら、近い未来への期待を抱いた静かな会話が続いていました。
日立市付近でトンネル区間を抜けると、いくつもの山を越えるように、道路が緩やかなアップダウンを続ける区間に入りました。いわき市はもうすぐです。
その頃になると、ラジオからは福島放送が受信できるようになりました。
車窓から見える風景は、時間がゆっくり流れているかのように穏やかで、都会の喧騒とはまるで別世界のように感じられました。
いわき市の第一印象
「いわき湯本インター 500m先」という案内標識が見えてくると、いよいよ目的地が近づいていることを実感しました。
インター出口の緩やかなカーブを抜けると、ここまでの道のりとは異なり、どこか落ち着いた空気が漂っていました。
出口を抜けて少し進むと、両側を山の稜線にはさまれるような風景が続きます。「いい感じの自然」ではありますが、家を建てられる地域ではなさそうです。
今日はここで県道バイパスを離れ、湯本方面に進みます。
さらに山を1つ越え、「いわきFCパーク」を右に見ながら下り坂を降りきると、道路わきには、地元の小さな店や家々が点在する地域に入ります。
このあたりから先が、居住可能な地域なのでしょうか。都心からかなり離れた郊外のようでもありますが、都会のような喧騒はどこにも感じられません。
車の窓を開けると、澄んだ風が車内に入り込み、その瞬間、都会の慌ただしさが一気に遠のいていくように感じました。
「いわきに来たんだな」という実感がじわじわと湧いてきて、車内の雰囲気も一段と和やかになりました。
住居エリアと地域の雰囲気
主な住宅地は、県道から左右に分岐する道路の先に点在するように整備されています。
今回の目的は、湯本地区と内郷地区。ネットで事前に調べていたいくつかの標準的な居住地域を実際に見学することが、この日の目的の一つでした。
ネット上の情報だけではわからない、周辺の雰囲気や地域特有の空気感を確かめるため、私たちは周囲を見渡しながら車を走らせました。
いよいよ事前に不動産検索サイトからピックアップして見つけておいたエリアの1つに近づいてきました。
交通量はほとんどなく、都会のような渋滞や騒音は全くありません。静けさに包まれ、遠くからはウグイスの鳴き声も聞こえてきました。
郊外の住宅地のようでもあり、賃貸アパートもあるようです。
住宅街のはずれの方でも、「古民家が立ち並ぶ」といった、スローライフを想像させる風景はなく、やはり「郊外」という印象です。
逆の観点からいえば、湯本地区では、整備されたエリア以外は「森の中」のためか、居住できるエリアはおのずから限られてしまうのかもしれません。
全般的な印象としては、都市郊外の住宅地を「とても静かにした感じ」という感じですね。
湯本地区での暮らしを想像してみる
住宅地エリアの雰囲気を遠巻きに確認しつつ、私たちは湯本地区での生活を徐々に具体的に想像し始めました。
湯本地区では、スパリゾートハワイアンズが有名な温泉施設として知られています。
その一方で、温泉街は独特の温かみがありつつも、住宅地と共存している印象で落ち着いた雰囲気に包まれていました。
湯本地区には日帰り温泉もありますから、日常生活の中に温泉を組み入れるという贅沢もできるかもしれません。
夫婦の会話で「今日は風呂は沸かす?」の代わりに「今日、温泉にする?」といった具合で…。
このあと訪れたのは、湯本駅周辺と、地元では有名なスーパー「マルト」でした。
湯本駅はJRの地方駅らしく、2階建ての小規模な駅ですが、特急で品川と直結しています。
また、駅前ロータリーにも混雑はなく、家族の出迎え時には、時間調整のため交通の邪魔にならないところで待機していても、怒られることはなさそうです。
スーパー「マルト」の品揃えは都会に劣らないどころか、新鮮な野菜や魚介類が豊富で、地元の人々の生活が垣間見えました。
湯本地区には、ほかにも学校や病院といった生活に欠かせない施設も整っていて、自然と人情味あふれる環境が広がっています。
さらに平地区まで足を延ばせば、大病院や大規模なショッピングモールもあり、少しの手間をいとわなければ、生活に不便は感じないでしょう。
ここでの生活は、都会の便利さとは違い、心に余裕を感じさせるものになるだろうと想像しました。
まとめ
今回訪れた湯本地区は、想像以上に多彩な表情を持つ地域でした。
県道側からは山に囲まれた印象を受け、実際に足を踏み入れると、周囲は森に包まれた落ち着いた場所でした。
意外にも、セブンイレブンやファミリーマートといったコンビニが数多くあり、日常の買い物に不便はなさそうです。ただし、ガソリンスタンドは休日休業の店が多く、注意が必要だと感じました。
生活必需品の調達は、地元のスーパー「マルト」が主な選択肢で、手に入らないものは市の中心部である平地区まで出かける必要がありそうです。
また、湯本地区は地形的にアップダウンが多いため、自転車生活は難しいかもしれませんが、車があれば問題ないでしょう。
この地区は、「山の中」といった場所から「街並みを見下ろす丘の上」まで、さまざまな風景が広がり、変化に富んでいるのが印象的でした。青森の田舎に似た風景も広がっており、「うん、悪くないな」と感じました。
さらに、日帰り温泉を日常生活に取り入れれば、タワーマンションの最上階に住んでいても味わえない贅沢な暮らしができそうです。
マクドナルドやスターバックスのような店はありませんが、むしろそれが私にはちょうど良いと感じました。いざ必要となれば、平地区まで行けばいいのですから。
湯本駅は、JRの主要幹線の地方駅らしく、決して大きくはありませんが、特急列車で品川まで直通しています。現在の「青い森鉄道」が「東北本線」と呼ばれていた頃のように、東京と「ゆるーく」繋がっている点も、青森の想いでの町と同じです。
駅前のロータリーも混雑とは無縁で、どこか懐かしい青森の地方駅に似た風情があり、好印象を抱きました。
帰りの車の中で、私は転職活動中だった妻に、「今転職して2~3年後にまた転職するよりも、移住を前倒しにして、地に足を付けて現地で就職活動したほうがいいんじゃないか?」と提案しました。このとき、移住に関する不安は消え、現実のものになりつつありました。妻もその気になっているようです。
今回のいわき滞在時間は約4時間。当日の午後には自宅に戻っており、いわきがそれだけ距離的にも近いことを実感しました。
湯本地区での生活を具体的に想像する中で、私たちは移住をいよいよ現実の延長線上にあるものとして捉え始めました。
次回の記事では、東京有楽町にある「ふくしまぐらし相談センター(福島県公式移住相談窓口)」を訪問し、移住に向けた具体的なステップをさらに深掘りしていきます。お楽しみに。