新盆を迎えた家々を供養して回る、いわきの伝統文化「じゃんがら念仏踊り」

いわき市豆知識
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今回の記事は、いわき地域のかなりマニアックなテーマです。

エンターテイメント性はないかもしれませんが、各地の伝統文化に関心を寄せている方ならば、きっとお役に立つ情報となることでしょう。

磐城資料歳時民俗記

トップ画像のこの本は、いわき市の広報誌「igoku」vol.13に掲載されている記事「260年前をあるく ~十十王(とじゅうおう)申す~」に触発されて購入し、昨日届いたものです。

ページをめくると、そこは漢字とカタカナの旧仮名遣いの世界。まるで私が民法(法律)を学んでいた頃の六法全書のような体裁です。ああ、昔、民法を勉強しておいてよかった!

それにしてもこの本の帯にかかれているのは、いわきの古い文化を示す言葉なのでしょうが、今の私には見当もつきません。

いわき じゃんがら念仏踊り

私がこの名前を初めて聞いたのがいつだったのか覚えてはいませんが、当時は、秋田の竿灯まつりや、山形の山笠まつりのように、市中心部の大通りで催される大規模なイベントだと思っていました。

しかしそれは、大間違いのこんこんちき!

いわき市の場合は、これらに相当するのは「いわきおどり」でしょうか。

「じゃんがら念仏踊り」は、10~20名前後の老若男女のグループ※1が、新盆を迎えた家々、この場合は過去1年に亡くなった方がいる家々を巡り、鉦と太鼓を打ち鳴らしながら念仏を唱え、供養するという風習です。

まぁ、供養とはいっても亡くなったのが「長寿を全うした、じっちゃん、ばっちゃん」ならば、地方・地域にかかわらず「いやぁ~大往生だね。めでたいね!」などといいつつ、通夜の席が「酒盛り・宴会」の場に変わってしまうという話はよく耳にするのではないでしょうか。

喪家に残された人々の悲しみに寄り添う

しかし、亡くなるのは「長寿を全うしたじっちゃん、ばっちゃん」ばかりではなく、あらゆる年代、極端をいえば0歳でも亡くなることはありうるわけです。

そんな家にとって、「じゃんがら」が来家することには、特別な感慨があるのではないでしょうか。

特別な感慨…うまく言葉にできない…

  • 「供養」…なんか形式的で違うような気がする
  • 「同情」…これも何か違う
  • 「心に寄り添う」…だんだん近くなってきた
  • 「悲しみを分かち合う」…さらに近くなってきたかな

結局、最も適切と思える言葉は見つかりませんでしたが、「親戚でもご近所でもなく、近隣の村々から※1繰り出してきた人々が悲しみを分かち合いに来てくれる」というのです。

※1:現在は、地域の青年会や文化保存会の方々が行っているようです。

このようなエピソードを知ることで、このような行事(文化)がいつ、どのように生まれたのかという、この地域文化の背景に、いっそうの興味を感じたのでした。

私は過去の記事で、この地域を「人つながりと地域コミュニティ再生の先進地域」と表現しました。

その「お互い様」という言葉に通ずるような文化の根底には、同じものがあるのではないかと感じるのです。

それらの背景には、どちらも前近代から脈々と受け継がれてきた、一貫した文化的な起源があるのかもしれないと感じました。

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